想起

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誰かのことを思い出そうとするとき、どこから思い出すだろう。

 

仕事で会っただけの人や、そんなに仲良くならなかった学生時代の知り合いなんかは、まず肩書きから思い出す。

「どこどこの会社のなになに課のなんとかさん」だとか、

「高校2年の時クラスが一緒だったなんとかくん」みたいな。

 

これがもう少し近くなると、今度は顔や声を思い出す。

友達や上司のことを思い出そうとすると、笑い声や笑い顔、叱責する声、真面目な顔。

そんな顔が思い出される。

近しくなって初めて、五感から入る情報で相手を登録しているのかもしれない。

つまりわたしにとって、誰かと仲良くなるということは五感で感じ取るということなのだと思う。

 

では、かつてわたしが友達や上司よりも近しくなった人たちはどうか。

心から愛した、とも言い換えられるかもしれない。

いや、友達のことを愛してないってわけじゃないけれど。

何だろう、心から愛して、焦がれた、まあそういった関係の人たちだ。

 

わたしが彼らのことを思う時、一番に想起されるのは「匂い」だ。

香水をつけていなくたって、その人にはその人の匂いがある。

それはかつてわたしを落ち着かせ、どきどきさせてくれた匂いたちだ。

あとは感触。

柔らかくて、しなやかで、だけど骨ばっていて。

そんな手触りに、あるいは触れてもらった感触に、包み込まれる感じがする。

それに包み込まれるということは幸せなことだった。

今はくすぐったくて、ちょっとだけ痛い。

 

今、心から愛して焦がれている人ならば、すべてを思い出すことができる。

顔も姿も声も感触も香りも、すべて。

今、目の前にいるかのような、そんな気持ちになる。

どきどきするし、ほんわかする。

今なにしてるんだろう。

わたしが思い出しているこの姿と答え合わせをしたい。

それが合っていれば合っているほど、支配的な悦びがある。

違えば違うほど、新しい発見とどきどきがある。

 

まあ、簡単な言葉にしてしまえば、早く会いたいってだけなんだけど。